虹について

2007/7/3 平野拓一(東京工業大学)


1. はじめに

虹は雨の後などによく見られる。空気中に浮いた小さな水滴による屈折・反射の組み合わせで、太陽光が戻ってくることによって見える色のついた環である。色が付くのは、白色の太陽光が分散性(周波数によって屈折率が異なる)によって、色ごとに違う角度に分解されるからである(※1)。

(※1) なぜプリズムはガラス、プラスチック、水などの媒質によらずに、同じように白色光を虹色に分解する分散性を有するのだろうか?誘電率は分極に起因している。原子は原子核と電子から成るが、この原子中の電子が印加電界によって動くことで引き起こされる分極を電子分極と言う。電子にも重さがあるので、照射電磁波の周波数が高く、あまりにも外部電界の変化が急激だと電子もその動きに追従できなくなり、やがて分極が無くなる。光の周波数は電子分極(ほとんど媒質によらない)が追従できなくなる周波数の近くであり、誘電率はその付近で変化する。光の周波数よりも高くなり、紫外線程度の周波数以上になると、どの媒質も分極が無くなり、誘電体はその性質を示さなくなるのである。


2. プリズム

プリズムは図1に示すように三角柱に切られたガラスである。ここで、ガラスは分散性を有する媒質である。分散性とは、電磁波の周波数によって(波長によって)屈折率が異なることであり、そような性質を有する媒質を分散性媒質と言う。図1(b)のように白色光(太陽光や蛍光灯の光)を通すと、赤色よりも青色の方が屈折率が大きいので屈折角が異なり、図2に示すように白色光は波長ごとに赤色、黄色、緑色、青色、紫色と連続的にスペクトル分解されて虹色が見える。


図1 プリズムの原理


図2 プリズムの写真


3. 虹

図3に虹が見える原理を示す。太陽光などが大気の水滴に散乱し、向こうに透過せずに戻ってくることによって虹が見えるのである。虹がカラフルな色に見えるのは、水滴が2で説明したプリズムと同様に分散性を有するからである。観測者からは2つの角度で強い光を見ることができる。低い角度にある虹は2回の屈折と1回の反射で見える光であり、主虹(一次虹)と言う。高い角度にある虹は2回の屈折と2回の反射で見える光であり、副虹(二次虹)と言う。副虹は主虹に比べて1回反射が多いので(全反射ではない)、光は弱まっている。水滴の半径が波長に比して大きいとき、このように平面波の反射と透過の理論を用いてもよい近似が成り立つ。大気中にある多数の誘電体球(水滴)からの後方への散乱により、虹が見えるのである。光の波長は最長の赤色でも800nm程度であり、1μm=1/1000mm程度である。大気中の水滴がこれよりも十分大きいとき(波長程度に小さいと雲や霧のように白くなる。それよりもさらに小さいと空のように青くなる)、かつ、水滴があまりに多すぎず(多すぎると光が弱い上にこちらに光が届かない。雨の中にいるような状況となる)、少なすぎず(少なすぎるとこちらに戻る光が強まらない)、適度な密度で存在するときに虹が見える。また、図3から主虹は下から青色、外に向かって赤色になるのが角度の関係からわかる。

図4から図6は虹の写真である。図4、図6では副虹もしっかり観測できる。


(a) 角度の説明

(b) 光は全雨滴から散乱されるが、特定角度の光の散乱光のみ見えることの説明
図3 虹の原理


3gp ムービー)
図4 雨上がりの虹の写真(東工大、南3号館)


図5 滝つぼの虹の写真(ハワイ島、ヒロ)


図6 スプリンクラーの虹の写真(アメリカ、ポートランド)


4. 虹と似た現象


図7 御来迎の写真

図7は御来迎(ごらいごう)と呼ばれる現象の写真を示す。飛行機から雲を見たとき、飛行機の影を中心に円形に虹色の模様が見えることがある。虹は後方への反射、屈折現象であるが、御来迎は後方への回折散乱現象で、御来迎の見える霧粒の半径は0.1mm以下である。御来迎は、グローリー、ブロッケンの妖怪とも言われる。

 


図8 光環の写真

図8は光環と呼ばれる現象の写真を示す。太陽や月に薄い雲がかかったとき、その周囲が虹色に見える現象である。これも回折散乱現象である。見にくいが、月の写真では光環の外側が赤くなっている。赤色は回折現象が青色よりも顕著だからである。


図9 暈の写真

図9には暈(うん)と呼ばれる現象の写真を示す。冬季に高層大気が冷えているとき、太陽や月の周りに環が見えることがある。虹のように見やすくはないが、環の内側は赤色、外側は紫色になっている。これは大気中の六角柱の氷晶による反射、屈折現象である。


参考文献

[1] 徳丸仁:“光と電波 −電磁波に学ぶ自然との対話−”、森北出版、2000.


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